十日の菊

GISとRとPythonで、できることを少しづつ。

CS立体図を作って、月の裏側に行ってみた。

月は自転と公転が同期しているため、地球からは常に同じ面が見えています。

月の裏側を見てみたい・・・
という衝動に駆られ、オープンデータとGISの知識で何とかならないか色々試してみました。

 

辿り着いたデータがこちら。

JAXAが公開している月面周回衛星「かぐや」のデータ

かぐや(SELENE)データアーカイブ

 

月面周回衛星「かぐや」は月の元素組成や鉱物組成、地形などなどを高精度に観測すること目的に2007年9月14日に打ち上げられました。そして、2009年6月11日に月表面へ制御落下し、運用は終了しています。

 

では、本題の月の裏側について、

使用したデータはこちら

「月全休地形グリッドデータ」 出典(ISAS/JAXA

こちらのデータは「LALT」というレーザ高度計で計測された地表面の高さデータです。

いわゆるDEMですね。

かぐやデータアーカイブの月全球グリッドデータ


ダウンロードしてみると、XYZ座標がタブ区切りで記録されていました。

グリッドデータをテキストエディタで開くと・・・

ちなみに、今回ダウンロードしたデータについてはJAXAのHPでデータの利用ポリシーが記載されています。

データポリシー | 研究者向け | 宇宙科学研究所

公開データについては出典明記すれば無償で利用できるとのこと。

こんな貴重なデータを無償公開しているJAXAには感謝しかありません・・・

 

GISデータに変換

まずこのグリッドデータをGISで表示できるよう変換してみました。

変換にはArcGIS Proを使用しています。

まず、「XYイベントレイヤーの作成」ツールを使用しグリッドデータをポイント化したあと、「ポイント → ラスター」ツールで画像化しました。

画像化した月面のグリッドデータ(出典:ISAS/JAXA

壮観・・・

画像化しただけでもクレーターの一つ一つがハッキリわかりますね。

大きなクレーターには天文学者や宇宙飛行士の名前がつけられていて調べてみると興味深いものでした。

 

補足(月の座標系って?)

GISを利用する上で座標系の設定はつきものですが、そもそも月のデータってそうすればいいんだ?

と思い調べてみると、あるんですね。月にも座標系が。

今回使用したグリッドデータは緯度経度で記録されていましたが、以下のフォーマット説明書(LALTのリンク)を読むと、1737.4kmの球体に対する緯度経度として記録したものとのこと。

かぐや(SELENE)データアーカイブ

 

そして座標系を調べていくとMoon 2000(ESPG:104903)という座標系がありました。

この座標系を設定するとGIS上で月の座標として設定されます。

Coordinate Systems

月の座標系

 

CS立体図を作ってみる

CS立体図ってなに?という方はコチラ(G空間情報センターのページリンクです)

https://front.geospatial.jp/showcase/csmap/

一言で表すなら地形の起伏を直感的にわかるようにデザインした地図のことですね。

 

このG空間情報センターではCS立体図の作成ツールも公開されているのですが、今回は単純にArcGIS Proの「傾斜(Slope)」ツールと「曲率(Curvature)」ツールを使用してCS立体図を作成しました。

 

まず、展開図がこちら。

月面のCS立体図(出典:ISAS/JAXA

単純なグリッドデータの画像と比べて、クレーターが非常にわかりやすいですね。

さすがCS立体図・・・、そしてこんなにたくさんクレーターが存在するのか・・・

 

続いてArcGIS Proの「3Dビュー」機能を使って球体を再現しました。

月面のCS立体図 表側(出典:ISAS/JAXA

月面のCS立体図 裏側(出典:ISAS/JAXA

完成です! これが・・・月の裏側・・・

思っていた10倍キレイにできました。

当初の目的を達成できたことよりも、月面の複雑さに驚いています。

 

今回は、オープンデータを単純に変換しただけですが、調べる過程で月に座標系があることやクレータの多さ、また月面に関する様々な研究を知ることができました。

ほんとにGISは奥が深いです。

 

終わりに

今回作った月面地図をTシャツにしてSUZURIで販売しています。

興味を持った方は是非、見に来てください!

suzuri.jp